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東京地方裁判所 平成8年(ワ)4273号 判決

原告

大東京火災海上保険株式会社

被告

日本航運株式会社

主文

一  被告は、原告に対し、金一五七万三一三四円及びこれに対する平成八年四月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを五分し、その二を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、金二六二万一八九〇円、及び別紙既払金一覧表の(求償分)欄記載の各金額に対する着金日欄記載の各日から右各金額の支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  争いのない事実

1(一)  昭和六二年一一月八日午後二時五四分ころ、千葉県市川市塩焼三丁目一〇番七号先路上の交通整理の行われていない交差点(以下「本件交差点」という。)において、岡村孝一が運転する自転車(以下「本件自転車」という。)と、牧山正弘の普通乗用自動車(以下「牧山車」という。)が衝突し、そのため岡村孝一が死亡した(以下「本件交通事故」という。)

(二)  ところで、本件交差点付近の道路は常時駐車禁止の規制がされているにもかかわらず、平野操(被告の従業員)が普通貨物自動車(被告保有。以下「平野車」という。)を本件交差点の角に駐車していたため、牧山車から本件自転車が走行して来る道路の見通しが悪くなつており、牧山正弘が本件自転車を発見するのが遅れた。

(三)  すなわち、本件交通事故は、牧山正弘、及び平野操ないし被告との共同不法行為によるものである。

2  原告は、牧山正弘との間の自家用自動車保険契約に基づき、岡村孝一の治療費等として、別紙既払金一覧表の合計欄記載の金員を、同表記載の日に支払つた。

二  争点

原告は、被告に対し、本件交通事故における被告の負担割合に基づき、別紙既払金一覧表記載の金員の支払を求めるものであるところ、被告の負担割合が本件の争点である。

1  原告の主張

被告の負担割合は、岡村孝一の受けた損害のうち二〇パーセントである。

2  被告の主張

被告の負担割合は、岡村孝一の受けた損害のうちの一二パーセントである。

第三当裁判所の判断

一  本件交通事故の態様は次のとおりである(甲第二号証から第三号証まで、第五号証、第七号証から第九号証まで、第一一号証)。

1  牧山車は、市川市宝一丁目方面から市川市富浜三丁目方面に向かつて走行していた。

そして、平野車は別紙交通事故現場見取図記載の甲地点に駐車しており、平野車のすぐ先が信号機の設置されていない左右の見通しの悪い本件交差点となつている。

2  牧山正弘は、〈2〉地点で時速約三〇キロメートルに減速し、〈3〉地点で本件交差点のうち左方交差道路の安全確認をし、その後、〈4〉地点で本件交差点のうち右方交差道路の安全確認をしようとしたところ、〈ア〉地点にいる本件自転車を発見した。そのため、急ブレーキを掛けたが間に合わず、〈×〉地点で牧山車と本件自転車が衝突した。牧山正弘が〈3〉地点で右方交差道路(本件自転車が走行して来た道路)の安全確認をしなかつたのは、〈甲〉地点に平野車が駐車していたため右方交差道路の見通しが悪かつたため、見通しの良い左方交差道路から安全確認をしたためである。

なお、本件自転車が走行して来た道路には一時停止の規制がされている。

二  そして、本件交通事故の態様からすると、本件交通事故は、本件交差点において、〈1〉牧山正弘が右方交差道路(本件自転車が走行して来た道路)の安全確認を十分にしなかつたこと、〈2〉岡村孝一が左方交差道路(牧山車が走行して来た道路)の安全確認を十分にしなかつたこと、〈3〉平野操が、本件交差点の角に平野車を駐車させたため、牧山車の右方交差道路ないし本件自転車の左方交差道路の見通しを悪くしたこと、によるものである。

したがつて、本件交通事故における、岡村孝一の過失割合は四〇パーセント、牧山正弘及び平野操の過失割合は六〇パーセントであり、平野操の負担割合は、右六〇パーセントのうちの二〇パーセント、すなわち、岡村孝一の受けた損害のうち一二パーセントとするのが相当である。

すなわち、牧山正弘との間の自家用自動車保険契約に基づき、合計一三一〇万九四五〇円(別紙既払金一覧表の合計欄記載の金員)を支払つた原告は、牧山正弘を代位して、平野車の保有者であり、かつ、平野操の使用者である被告に対し、右金員のうち一二パーセントに相当する一五七万三一三四円の支払を請求することができる。

三  ところで、法律において共同不法行為者間の求償債務につき特段の定めがなく、また、本件求償債務につき特段の合意がないから、本件求償債務は期限の定めのない債務である。

そして、原告が被告に対し右債務の履行を求めたのが本訴状によると解されるところ、本訴状が被告に送達されたのが平成八年四月一六日である(当裁判所に顕著である。)ので、翌日である同月一七日から右債務の履行遅滞が生じた。

したがつて、原告が被告に対し遅延損害金の支払を求められるのは、平成八年四月一七日からである。

四  よつて、原告の請求は、被告に対し、金一五七万三一三四円及びこれに対する平成八年四月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払を求める限りで理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却し、主文のとおり判決する。

(裁判官 栗原洋三)

交通事故現場見取図

既払金一覧表

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